日本のガラス展@代官山

最近は休日に東京都内に行くことなどほとんどないのだけど,今日は珍しく代官山のヒルサイドフォーラムまで日本のガラス展を見に行ってきた.大学のころ縁あって知り合った現代ガラス作家の方から招待状をもらったので,行こうかどうか迷い,最終日になって足を運んだのだった.

数年に一度開催される日本のガラス展は,日本中の現代ガラス作家の作品が一堂に集められるので,現代ガラスを概観するのにこれ以上ない場となっている.細かい技法や型・スタイルのようなものは知らないけれど,洗練された技法を追求する作家もいれば,破調でアクセントをつける作家もいたり,どれ一つとっても画一的でなく各作家の個性が出ていて面白い.絵画と違い三次元でありながら,彫刻よりは小さく,色々な角度から作品を眺めることができるのが良い.カラフルで有機的で,ただ眺めているだけでも心地良い.
現代ガラスの何が良いかというと,古典的な絵画のように目に見える対象を描いたものではないので,抽象度が高く意図が簡単に透けて見えないところが良い.鑑賞の多角性も相まって,見る人ごとに自由な解釈を楽しむことができる.もちろん,これはなんだろう,と考えずにボーっと見ても良いのだけど,力のある作品は特定の見方を強要しない一方で,能動的に解釈を迫る抗いがたい強制力のようなものを備えている.日常的に消費されるドラマや映画,小説などのように,受動的に作品に拘束されるのではなく,能動的に積極的に関わっていくような接し方になる.
何か惹きつけられる,というところは,自然の圧倒的な風景と同じようなところもあるのだけど,芸術作品の場合には作家自身の創作意図が存在している点で自然とは異なる.創作意図を作家自身が明かす場合もあるが,鑑賞時には大抵,作品につけられたタイトル*1のみが与えられるだけなので,どのように捉えるかは見る人に任されている.ふだん言葉に囲まれて仕事をしている身としては,タイトルの語感を楽しみ,作品から受けた印象と摺り合わせをする時間もまた楽しいものだ.そこにはなんとなく,何かの答え合わせをするような密やかさがある.作品によって(何だこれと)タイトルを先に見ることもあれば(こういうことかなと)あとで見ることもあるし(作品から受けた印象に満足して)最後まで見ないこともある.
芸術作品にふれていると,頭の中のぐちゃぐちゃした考えが自然と薄れていくのを感じる.学生の頃は頭の中が色々な想いでいっぱいになったときは,山に登ったり,電車に一日乗るなどして自分を見つめなおすということをやったが,最近はそういうわけにもいかないので,どちらかというと芸術作品を見ることで頭を空っぽにしているような気がする.
どこかに出かけるというのはいつも億劫なのだけど,ちゃんと外に目を開いていれば,何がしか得るものがあるのだなと思う.招待券を忘れて会場がなかなか見つからず,会場では現代ガラス作家の先生と立ち話をしていて入場が閉場一分前になってしまったのがもったいなかった(結局もう一枚招待券をもらって入って,終わった感のある会場を足早に回った).あと,土曜日には当時の知り合い(その作家の先生と一緒に勉強を教えていた子供たち*2や他の先生)が訪ねていたらしいので,時間に余裕をもって土曜日に来たほうが良かったな.
[追記] 下記日程で巡回展もあるようだ.ちょっと場所的に気軽にいける感じではないが,時間が合えばもう一度見に行ってみようかな.
西伊豆巡回展
会期  2012年9月29日(土)〜2013年4月10日(水)
会場  黄金崎クリスタルパーク・ガラスミュージアム

石川巡回展
会期  2013年4月20日(土)〜9月1日(日)
会場  石川県能登島ガラス美術館

重巡回展
会期  2013年9月5日(木)〜9月30日(月)
会場  パラミタミュージアム

*1:現代美術では「無題」とする場合も実際には多い.

*2:と言っても,もう大学を卒業して就職する年頃になっている.