軽量化の落とし穴

今更だが、複数の構成部分から構成されるパーツを軽量化目的でグレードアップするときは注意が必要だ。メインボディ以外のボルトなど、後から軽量化できるところで軽量化している製品だと、下手をすると元の製品をチューンした方が軽い場合がある。特に、ブレーキ(パッド)とRDは要注意。例えばSRAMのREDなどは、スチールの使用を極力廃して最初からチタン/アルミ/カーボンなどを使っているため軽量化の伸び代が極端に少なく、DURA ACEを軽量化するのとあまり変わらないこともある。
例えばRDの場合、REDが公称153gなのに対し、RD-7800-SSは公称180gと27gもの差があるが、SRAM REDの仕様と、RD-7800-SSの仕様を見比べながら、RD-7800-SSをREDと同じ要領で(REDのRDは全てのボルトがチタンまたはアルミ製、仕様書に載っていないものは重いチタンと仮定)軽量化してみると本質的に(メインボディの重量は)DURA ACEとあまり変わらないことが分かる。まずハンガーボルトをアルミにすると3.5g、元のスチールはアルミの約2.89倍の質量があるので、3.5*2.89-7≒6.6gの軽量化、プーリーボルトとケーブルボルトをチタンに、テンションスプリングをチタンスプリングにするとそれぞれ2.1g、1.5g、4.9gと2.3g、元のスチールはチタンの約1.77倍の質量があるので10.8*1.77-4.9≒8.3g の軽量化、さらにアウターケージとインナーケージをカーボンにすると、それぞれ14gと4gで、元のアルミはカーボンファイバーの1.75倍の質量があるので、(実際には付属品もあるのでやや大ざっぱになるが)18*1.75-18≒13.5g の軽量化。トータルで6.6+8.3+13.5=28.4g の軽量化になり、180-28.4g=151.6gとREDの重量に追いついてしまう。REDのアジャストスクリュー3つをアルミにしてRD-7800-SSと同じにしても、元のチタンはアルミの1.63倍の質量なので、1.5*1.63-1.5≒0.9g程度しか軽量化できない。Competitive Cyclistでの価格差はRD-7800-SSが$159.99なのに対して、SRAM REDは$310.00。Shimano製品は日本では安く買えるので、実売は恐らく20,000円近く違うだろう。上記のチューニングにかかる費用はせいぜい10,000円というところ。REDで揃えるならともかくRD単体に買う価値はあまり無いと言える。なお、ボルト類は素材と寸法で重量が決まるが、カーボンケージには軽量化を目指したより軽いものもあり、どうせ交換するなら最初からついているのはできるだけショボイ方が金銭的に効率が良く、大事なのはメインボディの重さと部品構成ということになる。
RD-7800-SSはさらに軽量化の余地があり、軽量なカーボンプーリー7gを使うと20-7=13g、さらにプーリーボルト、ケーブルボルトをチタンからアルミに、バレルアジャスターボルトをスチールからアルミにすると、それぞれ 1.3g、0.9g、1.6gで、2.2*1.63-2.2≒1.4g、1.6*2.89-1.6≒3gとなり、151.6-13-1.4-3= 134.2gぐらいまでは軽量化できる。ちなみに、値段が高くRD-7800-SSより重い CampagnoloのRECORDのRDは、チタンボルトとカーボンアウターケージを使っており、軽量化の伸び代という点ではRD-7800-SSより劣っていると言わざるを得ない。大事なのは「軽量化の伸び代(どこで軽いのか)」と「メインボディの質量」、そして「手間を惜しまないこと」だ。お金を出せば簡単に軽いパーツは買えるが、さらに軽量化しようとするとお金をかけても無理ということもある。RDで10,000円浮かせられれば、カーボンプーリーだとか他のところで軽量化することもできるのだから。