Short Paper は何のためにあるのか
近年自分の業界では,Long Paper に加えて Short Paper を採録する学会が増えてきた.個人的には,ページ数的に中途半端な内容しか書けない Short Paper なんて,出しても仕方がないと思っていた(デモやシステムなどの論文は除く).Short Paper を出した後,さらに仕事を進めて Long Paper にする人もいるだろうけど,実際にはそうならないで終わるものの方が多い気がする(そもそも Long Paper にするときに新規性を担保できるのかという話もある).また,一つの研究で中間報告的なものを何度も出すのはどうかとも思う.最後までやり通して Long Paper で通る研究なら,Long Paper でこそ出すべきだし,そうでないなら早めに手を引くか,議論を絞って深く掘り下げ,Workshop に出す方がよっぽど良いように思う.
また,学会が Long Paper と Short Paper とを同時に採録すると,どうしても Long Paper で通らなそうだから Short Paper で出すとか,そういう考えの人がいたりして,本来の Short Paper の趣旨にそぐわない論文が増えてしまうような気がする.同じ学会で発表するのだから,Long Paper と同じぐらい面白い Short Paper の発表を見たい.Long Paper の負け組的な研究ではなく,チャレンジングなタスクに挑戦したり,全く新しいアプローチを試みていたりと,結果はまだ出ていなくても,将来性のある「やんちゃ」な発表を Short Paper では見たいものだ.数年前 Short Paper を一度査読したことがあるのだけど,研究としては終わっているけどアイデアがイマイチのものや,研究のフォーカスが狭過ぎて Workshop に出した方が良いような論文が少なからずあったのを覚えている.今はどうだろうか?Long Paper で通らなかった負け組の逃げ道として Short Paper があるわけではないということは心がけたいと思っている.
そういうわけで,現状の採録・発表方式では Short Paper 自体に必ずしも良い印象はもっていないのだけど,一つの研究が,最終的に Journal を書くことで完結することを考えると,その発表形態自体は実は大いに未来性があるのではないかとふと思った.情報系では,論文としては国際会議の発表が(速報性が高いという点で)重視されるのだけど,ポストを得るためには Journal の本数こそ必要という捻れた状況があって,渾身の力を込めて Long Paper を出した後に Journal を出す元気が(というか時間が)残らないこともよくあったりする.もういっそ,これからの国際会議では,Long Paper を止めて Short Paper だけにして,会議の中での発表の扱いを均一にし,Journal にシフトして行く方がいいのではないか.