聴衆あってのデモを実感@オープンラボ一日目

今年は,デモの実装でやや燃え尽き気味だったこともあり,スロースタートという心持ちでオープンラボ初日の朝を迎えた.普段は電車で座れる時間帯に出勤するのだけど今日ばかりはそういうわけにも行かず,朝早くから満員電車に乗らなければいけないのがなかなかに辛い.
そういう中で朝一人目にデモを披露した年配の方がなかなかに尖厳しく,新聞があるのにブログやツイッターみたいな素人が書いたくだらないテキストを解析して何の役に立つのか,など味のある質問を繰り出してこられる.また,デモにこの機能が実装されていないのはサボりじゃないのかなど*1,実装で疲弊した身には少なからず堪えたので,午前中はディスプレイ背後に隠遁しつつデモに機能を追加するなどしていた.
午後は少し回復して,一般・学生の方を相手に時間をとって少しじっくりデモ.用意しているデモの種類が多かったこともあって,どれかのデモにはそれなりに食いついて頂き,しばし充実した時間を過ごす.デモはやはり聞き手との距離感が大切だなと感じた.もてなす側として,顔を伺いつつ相手の理解のペースに合わせてデモの内容を組み立てれば,相手の方も自然と食いついてきてくれるし,一度そのやり取りが回れば後は相乗的に自然と盛り上がってゆくものだ.お陰でこちらもうまく乗せてもらって,良いデモができた.(デモマシンの負荷の関係で)デモの動作が緩慢なところを我慢してくれた聴衆の方々には心から感謝したい.
企業の方の中には「ビジネスにはどう繋がるか」という視点でデモをご覧になられる方も少なからずいると思われるが,自分はデモを終えてそういう質問が最初に来るときはそのデモは失敗だったと内省するようにしている.自分はアカデミアの研究者として,必ずしもビジネス化できるものを念頭に置いてデモを作っているわけではない.ただ,大規模テキストを解析することでどのような世界が拓けるか,その荒削りな可能性の萌芽を感じてハッとしてもらいたいというその一念でデモを作っている.大学発ベンチャーなど,アカデミアの中でも研究のビジネス化が話題になる昨今だが,自分はそんなに器用ではないので,研究をするのに(自分も含めて)みんながワクワクするということ以外の別の目的関数を入れたらもう楽しく研究ができなくなってしまう.ビジネスに繋がる話を探してオープンラボに来た人もその当初の目的を忘れて引きこまれてしまうような,そんな世界をデモで見せられたらアカデミアの研究者としては最高だ.
明日土曜日も 10:00-17:00 の時間で公開デモをご覧頂けます.超大規模ウェブ空間をあの手この手でいじり倒すデモが目白押しなので,この機会をお見逃しなく.
ところで,同時進行の論文の方は,国際学会のカメラレディ原稿(月曜締め切り)については,英文校正の結果が来たので反映させて出せる状態に仕上がった.いくつか追加する議論はありそうだが,概ね終わったと思って良さそうだ.残る論文誌はどうなるのだろう.心配だな.

*1:仰ることはごもっともだが,サボっているわけではなく別のデモの実装に時間を割いていた.製品を作っているわけではないので個々のデモの完成度を上げるのは後回し.