この詰将棋がすごい!がすごい

Jeju から帰ったら,この詰将棋がすごい!2012年度版(在庫があるということで,ついでに2010年度版も)が届いていた.

表紙の上田さんではないが,思わず顔がほころぶ.
さくさく読めて楽しいのは「上田吉一インタビュー」(pp.110-131) .聞き手も錚々たるメンバーなので読み応えがある.話を引き出す聞き手の側も,いい具合に引き出されている感じで,インタビューというよりは対談(囲む会)という趣き.専門誌で大学院(50手以上の長編詰将棋欄)を担当していた相馬康幸さんの対談形式の解説を思い出す.あちらはもう20年以上前になるのか.
2008年で休刊した近代将棋に関するミニ企画「「近代将棋」を振り返る」も良い.昭和54年までの発表作で構成された図式精選以降,休刊までの発表作を俯瞰したまとめが出ていないのは確かに物足りなく,誰もが後を継いでまとめて出版して欲しいと思っているはず.ここから何か具体的な動きに繋がると良いのだけど(出版社が絡む関係上難しい問題もあるのかもしれない).
情報系の人間としては,ミクロコスモス(1525手詰)の作者の橋本孝治さんの論稿「妙手説は1990年代に復活した (pp. 238-250)」も面白い.(以下で以前書いた)詰将棋を解くアルゴリズムの発展を,詰将棋作家とプログラマの中間的な視点から追っている.

どこを開いても愉しい本だけれど,カバーの紙が破れやすいのと2010年度版と比べてテキストの密度が全体に減っている(フォントサイズが小さく,改行幅・欄外空白が増加)のが不満かな.もう少し詰めてくれた方が 1p で読める分量が増えて良かったかも.誰か,LaTeX組版してくれないものか(データがあれば自分でやるのだけど).