2017北海道サイクリング一日目

3年前の秋、もう一人旅したり学生の頃みたいに無茶しても良いかと思って15年ぶりに北海道を一週間走ってから、この時期は一週間から長くて二週間弱、北海道をサイクリングするようにしている。最初の年は大洗からのフェリーで苫小牧に入り、途中美瑛から帯広までは輪行したりして道東の知床の入り口まで行き、中標津空港から帰った。次の年は最初の年に電車に乗ったのが納得できなくて自走で苫小牧から網走まで行き、女満別空港から帰った。そして去年は台風に影響で富良野ー帯広間の峠が全滅だったので、旭川空港から入って美瑛に立ち寄り、その後、名寄、紋別サロマ湖、網走、知床峠中標津、摩周、釧路、R38からナウマン街道、天馬街道を通って支笏湖に寄ったあと苫小牧から船で帰った。

自転車で一人旅というとキャンプ派と宿派に別れるが、何より身軽に行くのが信条なので、荷物は最小限にしてYHやとほ宿泊まりで8:30〜17:30ぐらいで走っている。距離は長いときで170kmぐらい走るときもあるけど、道東は泊まる宿が多いので全行程で平均すると100kmぐらいになる。去年は日程が長かったので1100kmちょっと走ったが、その前までは700kmぐらいだった。このぐらい走ると満足できるもよう。

いつも行くのは宿を当日予約しても入りやすい9月半ばなのだけど、今年は出張や会議などで連続して休めないようにされてしまったので、初めてこの時期に来てみた。9/6から出張が始まるため、9/5までの旅程(宿)を事前に決めてから出発。時間がないので往路、復路とも飛行機になってしまったのが残念。。

前日の0時にやっと仕事を片付けて、午前3時まで準備して起きたのが朝7時。カーボンチューブラーホイールを付けてパンク対策もせず、レインウェアも無しと適当だったのにほぼノートラブルだった初年度を除くと、それ以降は毎回、宿に鍵を忘れたり、宿の場所や宿泊日がオホーツクマラソンのルート・開催日時とかち合って道路が封鎖されて閉じ込められそうになったり(2年目)、走っている途中でシートポストが分解したり(3年目)と、何がしかのトラブルに遭遇している。

というわけで、千歳空港から北海道に入った。1時間半ぐらいで着いてしまって全く風情がない。そして、空港について自転車を輪行袋から取り出したら、リアディレイラーが自転車本体からもげてて、衝撃。。。終わったか?と思ったけど、四苦八苦して応急処置して、不安の残る走りだし。写真を撮る心の余裕すらなかった。今年はスケジュールがタイトなこともあり、嫌な予感がしたので自転車保険に入ったりいつも以上に気をつけていたのに、なんてこったい。

コース概観 (google map)

その後は、トラブルで昼ごはんが食べられなかった以外は恐れていた雨も降らず、問題のない1日だった。途中、あまりにお腹が減ったので、5時に宿まで近いところにあるいずみ食堂でかけそば(小盛り)をかけこむ。この蕎麦がまた、うどんみたいにぶっとい麺で食べ応えがあるのだ。自転車は、1時間も走れば600kcal消費するので、いくら食べても体重が増えないのが素晴らしい。

最終的に千歳空港から60kmほど走って初日の宿である夢民村に着いたのは18:00。いつもと同じように、宿までの道の、馬の牧場と夕焼けの景色が素晴らしかった。最初に来た時はもう少し秋が深まっていて夜だったので野生の鹿がいて、なんか暗いけど馬が牧場にいるなと思って見ていたら、集団で策を飛び越えて道路に出て来てえっえっとなったのだけど、それ以降はあまり遅くつかないようにしているのでそんなこともない。

民宿夢民村は、ログハウス風の趣がある宿で、柔和な老夫婦のオーナーさんがいて、なんとも言えない温かい雰囲気で、とても落ち着く。トイレに宮沢賢治の詩などが貼ってあったり、浴室には子供の書いた絵が貼ってあったりしていて、手づくり感が感じられる。家族にもオススメ。宿には神戸から来ている年配のライダーさんがいて、とほ宿夜恒例のトークタイムでは、東京オリンピック昔の北海道の話などを聞きつつ、果実酒などを飲みつつ、夜は更けて行った。この宿に泊まるのは3年連続3回目だったのだけど、少し太りました?と言われたのがショックだった。。

今日の進捗
3h27m01s / 71.06km / 20.5km/h
東京で乗った分が含まれているため、平均時速がかなり遅くなってしまった。というか、眠い上にエネルギーが足りず。

ちなみに garmin edge 25 による北海道だけの進捗は
2h47m51s / 62.69km / 22.4km/h
となっている。

構文解析器の省メモリ化を頼まれた

外国の方から,公開している構文解析器を日本語学習支援の Android アプリに使いたい,というメールが来た.前段の形態素解析器 (Kuromoji) は 10MiB 程度で動作するそうで(多少解析が遅くなっても良いから)構文解析器もその程度の消費メモリ(ディスク)で動かせないか,という質問(要望).
現在公開している構文解析器の消費メモリは (Mac mini Server (Late 2012)) で 28 MiB ぐらいで,構文解析器としては比較的省メモリな設計になっているのだけど,高速化のため素性の組み合わせを陽に展開しているのである程度メモリが必要となる.そこでまず,素性の組み合わせを展開しない PKI を分類に使うことを薦めてみた.手元で試したところ,解析速度は 1/60 ぐらいになってしまうが動作に必要となるメモリ・ディスクは 6 MiB ぐらいになった.[追記] ディスクは 1.5 MiB で済むようだ.
しかしこれは流石に割に合わない(解析速度が遅くなり過ぎ)と感じる.そこで,陽に組み合わせを展開する素性数を大幅に制限して,配列*1で密に保持できる程度に展開する組み合わせ素性の数を抑えたら,解析速度の低下は 1/2 (それでも 10,000 文/秒)程度で,動作に必要となるメモリ・ディスクを 7 MiB まで減らすことができた.近似なしで解析精度はそのまま.これなら良いか.
ソースコードを一行だけ書き換える必要があったが,次に公開する版ではその必要がないようにしておこう.よく調べたら,ソースコードは書き換える必要なかったが,少し修正した方が良い箇所が見つかったので,次に公開する版で対応しよう.
[追記] もう少し調べたら,ディスク使用量は 2 MiB ぐらいで済むことが分かった.内訳は,素性の変換辞書が 0.13 MiB, 文節区切りのモデルが 0.56 MiB, 係り受け解析のモデルが 1.13 MiB.

*1:高速化のため,高頻度素性の組み合わせは配列で,それ以外はダブル配列で保持する実装になっている.

学会出張@東欧三日目: 機械学習のセッションに出るの忘れてた

三日目は体調も良好で,一日しっかり聴講することができた.学会も最終日だからかセッション数も一つ少なく,ややゆとりのあるスケジュール.三日目も色々な発表を聞いたが,記憶に残ったのは以下の3つ.

  • Machine Translation Detection from Monolingual Web-Text: MT で自動翻訳された文書を識別する問題.面白い問題設定で,かつ,問題に関する深い観察・理解から導かれた手がかりを用いて識別器を構築しており,誠実な研究という印象を受けた.テストデータの作り方がやや人工的,局所的で苦しく,多分に苦労の跡が感じられる.ここは2日目で触れたテキスト再利用に関するコーパスのように,ユーザに機械翻訳結果を利用しつつ翻訳してもらってコーパスを作り,評価していたら,隙もなくより妥当な評価ができたのではないかな*1.企業の研究らしく実世界データを用いた実験もあって,こういうところは見習いたい.
  • Offspring from Reproduction Problems: What Replication Failure Teaches Us: WordNet に基づく類似度尺度(計算)と NER に関する既存手法について再実装により実験結果の再現を試み,その成功と失敗から得た教訓について議論した研究.最初,スライドなしでトークが進み,あれ?スライドなし?と思っていたら,半分ぐらい時間を使ったところでスライドを使った発表に移って,少し知見を話して終わり.手法の再実装を容易にするため,実験結果を公開しましょう,という話もあったりして,3月の講演で同じことを話していた自分としては,先に話しておいて良かったと思った(というか,主張自体もかなり被っていて共感した).質問で,ここで実験結果の再現で困った経験のない人はいるか?この発表が Best Paper Award(を受けるべき)だ,などと叫んでいる人がいたが,流石にそれは言い過ぎかと思う.しかし,この論文が口頭発表で採録されるということの意味は,よく考えた方が良いと思う.
  • Good, Great, Excellent: global inference of semantic intensities: 昨年から始まった,国際論文誌採録→国際会議発表枠の論文.同義の形容詞を,形容する性質の強さの順に並べるというタスク.言語的なアプローチと数理的なアプローチをうまく組み合わせていて,手を尽くしている感があった.結果も inter-rator agreement と変わらないところまで辿り着いているので,この後に同じタスクで追随するのはちょっと厳しそう.

2つ目の研究は一昨年の同会議の business meeting での Ted Pedersen の以下の議論を踏まえて行われたようだ.ちょうど参加しなかった会議で,知らなかった.明らかに3月の講演の時に触れるべき内容で,サーベイ不足を反省.

というわけで,三日間に渡る会議もこれにて終了.セッションとしては,国際論文誌採録→国際会議発表枠のニセッション目が面白かったそうな.論文誌に良い研究が流れて会議論文の発表はイマイチだったと言う人もいたが,個人的には数年前の同会議よりよっぽど面白かったのだけど.感性の違いかなぁ.自分の分野には,今回参加した国際会議の他に,もう一つ大きな(歴史の長い)国際会議*2があって,自分はそちらの会議の幅広く論文をとる懐の深さが好きだったのだけど,こちらの会議もそういうところが今回は見受けられて,参加していて楽しかった.
昼はランチの時間を利用して,同僚氏とタクシーで近郊のフレスコ画で有名な教会(世界遺産)を訪ねて,中の人にフレスコ画に描かれた人物に関する説明を聞いたりした.地味だけどこういう遺跡,割と好きだな.夜は,今回の発表者三人で最終日打ち上げに行く途中,偶然に初日にランチを食べた研究員の方と会ったので合流して近くのビアバーへ.半地下の小部屋で,近所の野良猫を眺めながら,丸まったソーセージやマッシュルームのバター炒めなどを食べつつ,ビール片手に夜遅くまで語り合った.このぐらいの人数で食べたり話したりするのが自分にはちょうど良い.
今回,ホテルの朝食は美味しいのだけど,三日間同じとなると少しばかり飽きてくる.この辺りが帰りどころかな.今回,初日から二週間ぐらい前の記憶を遡りつつ日記を書いたのだけど,こんなことなら零日目などと書かなければよかったと少し後悔(本当は PENTAX K-5 のバッテリの笑い話を書きたかっただけ).

*1:コーパスを作っても企業だと公開するのは難しそうなので,この程度で留めておくのが合理的なのかもしれない.論文としての焦点もうまく書かないとぼやけるし.

*2:近年,学会運営の不手際などもあって,やや評判を落としているらしい.

学会出張@東欧二日目: 注釈付けに関する研究が興味深い

学会の一日は招待講演で始まる.初日と三日目は認知言語学や大脳生理学など周辺分野の研究者による学術的な講演なのに対し,この日はサービス寄り話で顔本のグラフ検索の話.まああんまり聞いててワクワクする話ではなかった.自分は研究室内でこの手の産業寄りの話ばかり聞いているので,個人的に(この会議には)その手の話は期待していないというのがあるのかも.多分普通の聴講者はワクワクするのだと思うけど.
続いて,Best Paper Award, Best Student Paper Award の発表.ちなみに,Best Student Paper Award は

  • A corpus-based evaluation method for Distributional Semantic Models (from Student Research Workshop)

だった.
初日は起きる時間が現地時間にピッタリ合って一日集中して聞けたが,二日目は疲れもあり,夜明け前に目が覚めてしまってやや寝不足気味で,聴講を聞き続けるのがしんどかった.ランチは軽い気持ちで本格的な現地料理の店に行ったら,料理のサーブがやたらと遅くて午後の最初のセッションの最初が聞けなかったりして,がっくり.自分も残念だけど,一緒に行った方々にも申し訳なく.
二日目の発表で記憶に残ったのは,

  • Reconstructing an Indo-European Family Tree from Non-native English Texts: 内容はタイトルそのまま.知的好奇心をくすぐる問題設定で興味深かったのだけど,後半の分析が事例分析の段階に留まっていて,やや物足りない.もう一段階抽象化して何らかの仮説をたてるところまで行って欲しいなと感じた.その辺りはジャーナル版で期待したい.
  • Crowdsourcing interaction logs to understand text reuse from the Web: Web 上のテキストを再利用して書かれたコーパスの構築に関する話.こういう論文が通るのが面白い.TREC の Web トラックから選んだトピックに関する文書の作成を crowdsourcing し,その作業ログを可能な限り*1記録して,そのログをもとにユーザが文書を書く際にどのようにテキストを再利用するのかを分析している.件のテキスト再利用については,引用型 (build-up) の再利用と,推敲型 (boil-down) の再利用が半々ぐらいだったのこと.
  • Outsourcing FrameNet to the Crowd: FrameNet に基づく注釈付けを crowdsourcing することを念頭に,注釈付けの手順を従来の二段階(フレーム選択→意味役割付与)から,直接,意味役割付与を行う方法に簡略化することで,注釈の精度,時間,注釈付けコストがどう変わるか調査した研究.実際に worker に支払った金額でコストを評価しているのが非常に妥当で現実的.結論は論文をどうぞ.個人的にはこういう研究,とても重要だと思う.

今日は懇親会がある日だったが,最近の学会参加では懇親会は基本参加しないことにしているので,講演終了後は今回の発表の共著者の卒業生と市内を歩いてまわって,夕飯を軽く食べて帰った.学生の頃のように観光気分で学会に来ることは無くなった(というか,発表の内容がよく分かるようになったので,発表を聞いている方が楽しくなった)けど,やっぱりずっと頭を使いっぱなしだとクラクラしてくるので,空いた時間には街を歩いたりしてリフレッシュするようにしている.

*1:作業者ごとにウェブの閲覧履歴や編集履歴を記録し,どのようにウェブ上から情報源となる文書を見つけて,どのような形でテキストを再利用したかを記録している.

学会出張@東欧一日目: 学会全体が良い方向に向かっているのを感じる

初日はまず,前日連絡がついた現地の修理センター兼販売店にバッテリの切れた PENTAX K-5 を持って行った.ホテルから学会会場が至近で,かつ修理センター兼販売店が会場の反対側だったため,早めに参加受付だけを済ませて販売店に急いだ.店は会場から徒歩15分ぐらいとやや遠め.
店に向かっている道すがら,街を歩く人や道端の店,建物などを眺めていたら,少しずつこの街らしい風景が見えてきた.特にユニークだと思われるのは,

  • 犬(ペット)が放し飼い.大型犬が多く,暑いからかよく地面に転がっている.夜歩いていて,すれ違いざまに大型犬が威嚇してきたときはちょっとびっくりしたが,飼い犬をリードで繋がなくても良いというのは.良いなあ.
  • 半地下で,地面すれすれに窓口を構えた*1売店があちこちにある.買うときに客がしゃがんで買う光景が新鮮.雨が降ったらどうするのだろうか?
  • 車が歩行者に優しい.両側2車線など道幅があリ交通量がある道路で,信号がなくて横断歩道だけというところが結構あるのだけど,渡り始めると周りの車がどんどん止まる.というか,横断歩道の途中で躊躇していると止まった車に(早く渡ってと)クラクションを鳴らされるぐらい.
  • 街並みとは関係ないが,ホテルの食事が充実している.様々な家畜(牛,羊,バッファローなど)のヨーグルト,ブルー,イエロー,ホワイトチーズ(白のはシレネと言うらしい),様々なソーセージ類などなど.クロワッサンが並以上に美味しくて助かった.無線LAN も繋がって会場も徒歩5分とホテル大当たり*2

さて,店には開店と同時に入ったのだけど,メールで連絡をとった Petar さんがまだいないとのことで5分ほど待った.ショーウィンドウには PENTAX 製品がずらり.しばらくして,来た Petar に空のバッテリを渡したら,君,抜けてるねぇなどと言いながらも(いや本当にそうだけど),空のバッテリを充電している間に使って,と代わりのバッテリを貸してくれた.夕方受け取りに戻ると言い残して学会会場にとんぼ返り.
その後は丸一日みっちり発表を聴講.口頭発表は1セッション3件(short paper は4件)だったのだけど困ったことに1セッション全部聴きたい,というセッションが無く(というか,聴きたい発表の発表時間が被っていることが多く),発表単位であっちこっち移動することになって,えらい疲れた.8階建ての学会会場で,発表がある部屋が上層階と下層階(1セッションだけ)に分かれていてこの間の移動は時間的にも辛そうだったので,上層階のセッションを中心に聴講.また,午後の2セッションは休みなしで連続していて,疲れるし移動を強いられるしで参った.誰が考えたのこれ?5分ぐらい挟んでくれたらいいのに.
ランチは出身研究室時代に研究員だった方と現地料理を食べに行った.ブルーチーズのソースがかかった臓物パイのようなものを食べたら,結構ヘビーで難儀した.食べながら,テニュアを捨てて研究員に戻った理由などを伺ったりするなどした.人生いろいろ.タクシーに乗った時から感じていたが,ここは物価が非常に安いようで,食べるのも移動するのも,西欧の平均と比べて半分ぐらいのコストで済むようだ.
初日の聴講で印象に残った発表を列挙すると,

  • Language-Independent Discriminative Parsing of Temporal Expressions: ヒューリスティクスで解かれることが多いニッチなタスクに,一歩引いた視点からまじめに取り組んでいる研究.研究としてのインパクトはあまりないと思うが,エラー分析をしっかりしているのには好印象.
  • Adapting Discriminative Reranking to Grounded Language Learning: 面白い問題設定で,手法も古典的ながらうまく設計されている.自分が馴染みがなかっただけかも知れないが,新しい流れを感じた研究.
  • Automatic Interpretation of the English Possessive: 第一著者が来れず Eduard Hovy が発表していたのだけど,ほとんど注釈付けの話だった.発表者の色が出たのだろうか?分析系の話は技術の押し売りみたいな研究と比べて知見が沢山得られるので,外れが少なく安心して聴ける.
  • Modeling Thesis Clarity in Student Essays: エッセーの明瞭性を評価する研究.この手の「質」を扱う研究は評価データの設計が難しいのだけど,その辺りを意識してタスクをうまく切り出したな,という印象.
  • Natural Language Models for Predicting Programming Comments: プログラム中でプログラマのコメント入力を支援する言語モデルを学習.これぞ short paper という発表で,実験もよく設計されていて良い.他の long paper の落ちこぼれ的な発表とは違い明らかに異彩を放っていた.

全体として(MT 系のセッションに参加しなかったからかもしれないが)手法の技術レベル押しの論文が減っているような印象を受けた.また,2010年ぐらいから進められている,採択する研究を多様化するという流れは更に進んでおり,学会として健全な方向に向かっているように感じた.あとコードやデータの公開を宣伝する発表が多かったことも強く印象に残った.正確には数えていないが,聴講した発表では 1/3〜1/2 ぐらいの研究で何らかのコードやデータを公開していた(ように感じた).
その他,学生の役に立つかと思って聴いた

  • The Haves and the Have-Nots: Leveraging Unlabelled Corpora for Sentiment Analysis

は(どれもこれも既存研究の手法の借用,という説明で)新規性があまり感じられず,面白くなかったのだけど,単純に Brown クラスタリングしてクラスタ素性を入れたら評判分析のポジネガの分類精度が 87% -> 97% に上がったという報告に絶句.正直,その実験大丈夫?と思っていたら,同じように感じた聴講者が他にもいたようで,ずいぶん上がるんだね,なんで?というような質問していた(使ったデータセットの加減で上がったのでは,というようなもやもや回答).
最後に,深層学習 (RNN) で学習した句表現と PCFG と組み合わせた構文解析の研究

  • Parsing with Compositional Vector Grammars

では,PCFG を前段に使って解候補を絞ることで,後段の RNN で必要となる行列計算を減らして高速化するという話だったのだけど,(以下思い出して書いているのでうろ覚え)ここに Yoav Goldberg が深層学習って,分野研究者が分野特有の工夫をしなくてもうまくいくってのが売りなんじゃないの?と突っ込んでいたのが印象的だった.関連して,Mark Johnson が,単純な PCFG ではなく,複雑化した(例えば語彙化した)PCFG を組み合わせるのはどうか,というような質問をしていた(質問の順序としてはこっちが先).離散と連続,またモデルの解釈可能性というのは,この分野で手法を設計する上で,自分なりの答えを出していかないといけない問題だよなあ.
初日の最後のセッションはポスターセッションで,自分たちは発表があったので貼ったポスターの前に待機.口頭発表のセッションもそうだけど,ポスターセッションも会場がバラけてしまっていて(複数階,かつ各会場が連続していない),人もバラけてしまいっている感じで,なかなか辛かったのだけど,それでも何人かは聴きに来てくれて,話ができた.この会議では,ポスター発表も口頭発表も論文としては同格扱い*3だけど,(発表形態を自分で選んだわけではないのだから)もう少しポスター発表者に敬意を払った扱いをしてくれないと悲しいな(たくさん採択すればいいってもんじゃないよ).
夜は発表した三人で打ち上げ.ビール一杯330mlで100円.500mlでも140円ぐらい.どんだけ安いの.この国に住んだらアル中になること間違いない.今日は聴講といい,K-5 のバッテリの充電といい,移動続きで,さらに最後に発表があって,非常に疲れた一日だった.ともあれ,初日に発表が終わるのは気楽でござる.
[追記] 初日の研究では,同僚氏も聞いていたが,

  • Unsupervised Transcription of Historical Documents

が問題設定と,手法(技術)共に面白そうな感じ.自分の考える理想的な研究として,問題設定に新規性・重要性が認められ,かつ,技術もその問題に対して新規に設計・洗練されている,というのがあるのだけど,そういう研究ってこの会議でもそれほど多くない.斬新な問題設定ながらベースライン程度の手法,あるいは陳腐な問題設定に対して技術の押し売り,というのは研究している人も楽しくないと思うけど,聞いていても当然楽しくない.

*1:写真より,もう一段下に窓口を構えた店が多かった.

*2:唯一,部屋で湯が沸かせず珈琲を入れるのに困ったのだけど,朝食時に聞いたらお湯を分けてもらえた.一日目は既に沸かされたお湯をもらったらぬるくてうまく入れられなかったので,二日目以降は沸騰したお湯をくれといって機械から直接入れたお湯を分けてもらった.で,入れた珈琲をサーモスの真空断熱マグで会場に持ち込み,ごくり.珈琲うまし.

*3:論文集でも区別されていない.発表形態は採録後に決まったのだけど,査読者のスコアが低い方をポスターに回したというわけでもないらしい.期待できる聴衆の多さで決めている感じ?

学会出張@東欧零日目: Pentax K-5 のバッテリが切れてた orz

朝起きたら 4:44 で縁起悪し.荷物を詰めてみたらスペースがかなり余ったので,PENTAX K-5 (+ TAMRON SP AF17-50mmF/2.8Di II) を入れてみた.上野からスカイライナーで成田空港へ.そう言えば K-5 のバッテリ残ってたかなと確認したら,切れてる orz.スカイライナー車内にあった成田空港の案内パンフレットを眺めていたら,第二ターミナルにカメラのキタムラが入っていることが分かったので(トルコ航空は第一ターミナルなのだけど)ダメもとで行ってみることにした.
第一ターミナルでは,事前にオンラインチェックインしていたので並んでいる列を横目にほぼ待ち時間なしでチケットを受け取れた.出発時間が 11:40 と早まっていて,やや余裕が無い.すぐさま第二ターミナルへ無料バスで移動.4F のカメラのキタムラに行ってみたが,やはり K-5 のバッテリーはないとのこと.まあ,そうだよなぁ.ヨーロッパの大きい都市ならあるかもと言われたけど,今回訪れる東欧の某都市で PENTAX の K-5(のバッテリ)なんて在庫している店はないだろうし,(訂正: 全然あった,失礼)もう K-5 で撮るのは無理だな.あーあ.運び損か.学会参加者の誰かにバッテリチャージャーを借りるという手もあるけど,CanonNikon ならともかく,PENTAX だと持ってきている人などいないだろうし無理だろうな.残念.K-5, ただの箱.まあ,しっかり発表聞きなさいということなのだろうな(最初から十二分にしっかり聞くつもりで来ているのだけど).
諦めて 3F で見かけた AIU で保険に入り,折り返して第一ターミナルに着いたのは搭乗45分前.ダッシュでチェックイン.Merkur 34C HD は,シェービングクリームを見せるときにガン見されたけど,特にお咎めなし.あれ?いいのか.いや,ダメでしょ?15000円->110€に両替して,搭乗口に行ったら,同僚氏や卒業生氏も同じ便で,参加する共著者が全員揃った.
今回の出張で使ったのはトルコ航空,ほとんど乗り換えの便だけで選んだけだのだけど,離陸直後に手拭きも出るし,スリッパやリップクリーム,アイマスクなどアメニティも充実していて,食事も A- ランクぐらいの美味しさ,座席にコンセントがついていて Wi-fi も無料で接続できたり(ボーイング 777-300ER のみらしい)と至れりつくせりで素晴らしい.さすがに食事後のデザートはないが,シンガポール航空に継ぐぐらいの快適さ.これはまた利用したいレベルだ.
悪あがきで調べて,某都市に存在が確認された(ホテルから歩いて行けそうな)PENTAX の代理店と修理サービスセンターにバッテリの充電(あるいはチャージャー,バッテリの購入)ができないかメールで聞いてみた.一縷の望みにかけてみよう.機上で何やってるんだ感が半端ないので,ネットで公開されている予稿集を眺めてみる.
[追記] ギリシャで休暇中の代理店の中の人から早速メールがあり,Yes we can on Monday, とのこと.スバラシ.結構やるな,PENTAX.昼休みにでも言ってみるかや.[追記] さらに,地元の PENTAX ファンクラブの人からもメールがあり,空のバッテリを充電している間,代わりのバッテリを貸してくれるとのこと.東欧の PENTAX ユーザもスバラシ.さらに修理サービスセンターを請け負っている販売店からも返事があった.結局,その販売店が一番近そうだったのでそちらに行くことにした.
[追記] 到着後,成田で替えたユーロを現地通貨に両替.バスで市内まで移動しようと思ったが,夏時間であることを忘れていて,経由地のトルコと同じ時差であることに気がつかず,来ないバスを延々待つことに.その後,諦めてタクシーで移動.10km ぐらいで700円ほどであった.安い.チェックイン後はすぐ就寝(時差の関係で日本は早朝の時間なのですぐ眠れる).ホテルは無料で無線LANがバッチリ繋がる.調べておいてよかった.ホテルは同僚氏と同じで,HIS経由で予約した自分と学会経由で予約した同僚氏は宿泊費が倍近く違ったのだけど,果たして,自分の部屋は同僚氏の部屋の半分ぐらいのサイズで,ベッドも向こうがダブルに対してこちらはツインと少し使い勝手が悪い部屋だった.泊まるだけなので全然問題ないけれど.

東欧の学会に向けて出張準備中

日曜日から東欧の学会に出張予定なので,図書館に Lonely Planet Eastern Europe を借りに行ってきた.もちろん,分厚い Lonely Planet をそのまま持って行くのは無いので,該当都市(12Pしかない)だけ両面印刷.これを飛行機内で流し読みするのがいつものパターン.昨年の同学会では,発表直後に別件のため途中離脱したけれど,今回は本大会は全日参加する予定.チュートリアルとか,ワークショップとかにのんびり出ていた時代が懐かしい.
発表資料の方は自分の担当箇所も含めて大体仕上がったのでポスト.3月の共同講演時に利用した Google Slides で共同作業した.正直なところを言うと,Google Slides で作業したのは共同作業ためだけではなく PowerPoint を使いたくない(仮想マシン上にしか入っておらず,起動するのが億劫)というのも大きかった.仕上がった資料はまあこんなんでいいのかな,という感じだけど,多分いいんだろう.問題は資料よりも発表の方だ.第一著者の卒業生が頑張ってくれることを期待.
出張に持って行くのは,前述の Lonely Planet(のコピー)に加えて,MacBook Air (Mid 2011), パスポート,Eチケット,ホテルバウチャー,折り畳み傘,髭剃り(とクリーム),歯ブラシ(と歯磨き),着替え下着二日分,珈琲用品(ミル,バネット,フィルタ,豆),筆記具(モレスキン,ペン)ぐらい.普段使いの 11L のワンショルダーバッグに十分収まる(はず).担いで走れない量の荷物を持つのは不快(で不安)だし,荷物を預けるのも嫌*1なので,最近の出張では極力荷物を減らすようにしている.さて,前回出張時に忘れた Merkur 34c HD はどうしようか.ダメなら刃だけ捨てれば良いのだけど(どうせ使い古した刃だし).
カードがあまり使えない国のようなので,現金を用意しなければいけない.学生から聞かれたのだけど,現地通貨(ユーロでない独自通貨)の入手性がやや悪いようだ.現地で日本円から替えるつもりでいたけど,成田でユーロに替えて行くのが良いのかな.
出張中に締め切りがある国際学会のカメラレディ原稿もざっくり 8P->4P に削ってほぼ完成.これぐらい減らすのだと,ちまちま削っていても仕方がないので,さっさと決断して実験や手法をざっくり削るのが早い.手法も実験も半分ぐらいまで減らした.ページ数の関係で対応が難しかった査読者からのコメントは,次の原稿で反映することにしたい.

*1:以前荷物を預けたときに,別の乗客の所持品と思われるビネガーが自分の荷物にぶちまけられていてトラブったことがある.(ワインならともかく)ビネガーなんか預けるなよな,というところなのだと思うけど,預けないで済むならそうするのが一番だと思った.また,出てくる荷物をボーっとただ待っているのが,なんだかアホらしいし,時間の無駄,というのもある.