軽量化の落とし穴(追記)

ブレーキパッドについても少し考察してみる。ブレーキパッドは多くの場合ブレーキホルダーとシューがセットで売られているものが多いが、これが曲者である。ブレーキパッドで言うところのメインボディはホルダー本体のみで、パッドマウントボルト(とその台座、ワッシャー)、シュー調節ボルトおよびシューは後からアップグレード可能である。そう考えると、元々ついているシューやボルトが何gなのかを知らないと本当に軽いブレーキパッドが手に入らないということになる。また、シューはブレーキの性能に大きく影響するので、リムの材質や要求する制動力によって選ぶべきで、ここが軽くても仕方がない。
BTP、M5、Zero Gravity などの超軽量と言われるパッドは、ボルト類がアルミ製になっており、さらにシュー調節ボルトが無く(トーインの調節が出来ない)、これらの部分でかなり軽量化されている。M5やZero Gravityは、見た目は大きく肉抜きされていたり、タイヤを保護するいわゆるパッドの「羽根」の部分が無かったりとDURA ACEのホルダーよりかなり軽量化されていそうだが重量差はかなり小さい。CORIMAのパッド4つ8gを含めると、M5 (37g)Zero Gravity (37g)BTP (33.7g)とDURA ACEの72gより大幅に軽いが、ボルトとシューを交換することでこの差かなり差は縮まる。まずDURA ACEはシューが5.5g程度なのでホルダーはボルト類込みで 72-5.5x4=50g、さらにホルダー本体は実測で6gほどなので、ボルト類が50-6*4=26gとなる。ボルト類が一ホルダー当たり6.5gもあることになり、例えばM5のアルミボルト2.15g((18.5-7.1*2)/2)と比べると圧倒的に重い。シュー調整ボルトがあることを勘定に入れても、チタンに変更することで(元のスチールはチタンの1.77倍の質量があるので)26-26/1.77≒11.3g軽量化できるし、アルミに変更すると(元のスチールはアルミの2.89倍の質量があるので)26-26/2.89≒17g軽量化が可能で、ホルダー全体で、ボルト類をチタンにした場合で50-11.3=38.7g、アルミにした場合で50-17=33gまで軽量化することが可能だ。これにCORIMAのパッドの重量8gを足すとそれぞれ46.7g、41gとなり、特にアルミボルトの場合には1万円以上するM5やZero Gravityパッドと4gしか変わらない。馬鹿みたいな話だ。トーイン調節が不要であれば、(アルミの)シュー調節ボルトを除くと1g程度軽くなり、さらに差は縮まる。
ただし、DURA ACEのマウントボルトはM5なので、アルミボルトだと推奨締め付けトルクに耐えられない可能性がある。なので安全を取るなら少なくともフロントはチタンボルトの方がベター(BTPも以前は前のみチタンボルトだったそうだ)。BTP、M5、Zero Gravity のパッドのマウントボルトがM5なのかM6なのか良く分からないが、ブレーキ時にかかる加重を考えると、パッドのマウントボルトにアルミを使っているのはちょっと不安になるところだと思う。M5のアルミボルトの破断トルクは5.68Nmなので、7075T6アルミでもギリギリぐらいかも知れない。識者の意見を聞きたい(追記: M5のアルミボルトの最大締め付けトルクは5nmとの情報を聞いたので、一応、FD/RD/ブレーキの各場所の最低締め付けトルクはかけられるようだ)。

笑い話として、AZTECのマグネシウムパッド、売りのはずのマグネシウム製のホルダーは6.5gとDURA ACEより重く、軽いのはシューとボルト(一ホルダー当たりシューが5.25g、ボルトが4g)で、詐欺のような製品。これではボルトを買うためにパッドセットを買っているようなものである。他にもJagwireやKoolstop、KCNCなども軽量パッドを出しているがボルトの素材やシューに注意して検討した方が良い(個人的にはDURA ACEのパッドを3000円程度出してチタンボルトでチューンすれば十分と考える)。
ボルト周りの話は多少は調べて書いていますが、材料工学は専門ではないのでいい加減なことも書いていると思います。ここに書いた情報を元にセッティングしてレース等でクラッシュしても責任は取れないのであしからず。